マンションの給湯器交換は管理組合への申請が必要?
-手続きと注意点を解説-
☞ マンションで給湯器を交換するとき、「自分の部屋で使う設備だから、すぐ業者に頼んでよいのでは」と考える方もいるかもしれません。
しかし、マンションの給湯器交換では、管理規約や管理組合への確認が必要になることがあります。給湯器本体は各住戸で使う設備でも、設置場所がベランダ、共用廊下側のパイプスペース、PS扉内、アルコーブ付近など、建物の共用部分と関係しやすいためです。
とくに、PS扉への加工、外壁・躯体への穴あけ、排気方向の変更、共用廊下での搬入作業、ベランダの避難経路への影響がある場合は、自己判断で進めると管理規約違反や近隣トラブルにつながるおそれがあります。
⇒ この記事では、マンションで給湯器を交換する前に確認したい管理組合への申請、管理規約、PS扉、ベランダ、近隣配慮、工事前後のチェックポイントをわかりやすく解説します。
監修者
ダスキン給湯器テクニカルアドバイザー 河津勇司
給湯器交換企業にてガス給湯器取り付け作業を担当
これまでに施工経験数3000以上を実施。個人事業を立ち上げ、給湯器取り付け経験を積む。
現在は株式会社ダスキンにて給湯器施工及び後輩育成に従事。
住まいの衛生管理、害虫対策、防犯・安全対策など、暮らしの困りごとに関するサービス開発・品質管理を担当。生活者が安心して住まいを整えられるよう、公的機関・メーカー等の公開情報も参考にしながら、実用的な情報発信を行っています。
目次
マンションの給湯器交換でまず確認したいこと
☞ マンションで給湯器交換を検討するときは、正式に工事を発注する前に、管理規約や使用細則を確認しましょう。
国土交通省のマンション標準管理規約では、専有部分の修繕等であっても、共用部分または他の専有部分に影響を与えるおそれがある場合は、あらかじめ理事長に申請し、承認を受けることが示されています。また、申請時には設計図、仕様書、工程表などを添付する規定もあります。
給湯器交換では、次のような場所が関係しやすくなります。
• 共用廊下側のパイプスペース
• PS扉
• ベランダ
• アルコーブ
• 外壁
• 排気口まわり
• 搬入経路となるエントランスや廊下
⇒ つまり、確認すべきなのは「給湯器本体が誰のものか」だけではありません。建物側に影響するか、近隣住戸に影響するか、共用部を使うかという視点が大切です。
申請・承認・届出の違いを知っておく
☞ 管理組合への手続きには、大きく分けて「申請・承認」「届出」「事前連絡」があります。
申請・承認は、共用部分や他の住戸に影響を与えるおそれがある工事について、管理組合の承認を受ける手続きです。PS扉の加工や、外壁・躯体に関わる工事などが該当しやすくなります。
届出は、承認までは不要でも、管理組合が工事内容を把握しておくために提出するものです。国土交通省の標準管理規約でも、承認を要しない修繕等であっても、工事業者の立入り、資機材の搬入、騒音、振動、臭気などの影響について管理組合が事前に把握する必要がある場合は、届出が必要になる考え方が示されています。
⇒ 事前連絡は、管理会社や管理人に「給湯器交換を予定している」と伝えることです。申請が必要かどうか分からない段階でも、まず連絡しておくと安心です。
マンションごとにルールは異なるため、「前の住まいでは不要だった」「同じマンションの知人は申請しなかった」といった判断は避けましょう。
管理組合への申請が必要になりやすいケース
☞ 給湯器交換で管理組合への申請が必要になりやすいのは、共用部分に影響する可能性がある工事です。
国土交通省の「専有部分の修繕等に関する細則(案)」では、共用部分に影響を及ぼさないガス給湯器の交換工事は申請不要の例として示されています。一方で、ガス給湯器交換のためにPS扉に穴を開ける工事は、共用部分に影響を及ぼす工事として、原則許可しない例に挙げられています。
確認が必要になりやすいのは、次のようなケースです。
• PS扉に穴あけや加工が必要
• 外壁や躯体に穴を開ける可能性がある
• 排気筒や排気カバーの形状を変える
• 既存機種とサイズや排気方式が変わる
• 共用廊下を使って搬入・搬出する
• ベランダの避難経路付近で作業する
• 工事音や臭気が近隣に影響する可能性がある
反対に、同じ設置場所で、既存機種と同等の仕様へ交換し、共用部分に影響しない場合は、申請不要または届出のみで済むマンションもあります。ただし、最終的な判断は各マンションの管理規約・使用細則によります。
⇒ 大切なのは、「同等品交換だから大丈夫」と決めつけないことです。給湯器のサイズ、号数、排気方式、配管位置、リモコン配線、排気カバーの有無などが変わると、建物側への影響が出る場合があります。
給湯器交換の手続き5ステップ
1.現在の設置タイプを確認する
☞ まず、給湯器がどこに設置されているかを確認しましょう。
主な設置場所には、ベランダ壁掛け、共用廊下側のPS内、PS扉前方排気タイプ、アルコーブ付近、屋外据置タイプなどがあります。
確認するときは、スマートフォンで次の写真を撮っておくと、管理会社や施工業者に状況を伝えやすくなります。
• 給湯器本体の全体写真
• 型番シール
• 配管まわり
• 排気口まわり
• PS扉やベランダ全体
• 搬入経路になりそうな共用廊下
型番、号数、追いだき機能の有無、リモコンの種類も分かる範囲で控えておきましょう。
2.管理会社・管理組合に連絡する
☞ 次に、管理会社または管理組合に「給湯器交換を検討している」と連絡します。
確認したい内容は次の通りです。
• 申請・届出・事前連絡のどれが必要か
• 工事可能な曜日・時間帯
• 必要書類
• 掲示板への工事案内の要否
• 近隣あいさつの範囲
• 共用部の養生ルール
• 搬入経路
• 作業車の駐車場所
• PS扉や外壁加工の可否
• 排気カバー設置の可否
• 工事後の完了報告の要否
電話で確認した場合も、メールや申請書で記録を残しておくと安心です。後から「聞いていた内容と違う」という認識違いを防ぎやすくなります。
管理会社へ送る文面は、次のように簡潔でかまいません。
「〇〇号室の給湯器交換を検討しています。設置場所は共用廊下側PS内です。交換にあたり、管理組合への申請や届出、工事可能時間、必要書類、共用部養生のルールを確認したくご連絡しました。見積書や仕様書が必要な場合は、施工業者に準備を依頼します。」
3.見積書・仕様書・工程表を用意する
☞ 申請や届出が必要な場合、管理組合から書類提出を求められることがあります。
よく求められる書類は、見積書、工事内容書、機器仕様書、工程表、施工業者情報、緊急連絡先などです。標準管理規約でも、専有部分の修繕等で承認が必要な場合、設計図、仕様書、工程表を添付した申請書を提出する考え方が示されています。
⇒ 施工業者を選ぶときは、給湯器交換の技術だけでなく、マンション工事に慣れているかも確認しましょう。管理組合提出用の書類、共用部養生、搬入経路、近隣配慮まで対応できる業者だと、工事当日の不安が減ります。
4.工事日と近隣告知を調整する
☞ マンションでは、工事音や搬入作業が周囲に影響します。工事日は、管理規約や使用細則で定められた時間帯に合わせて調整しましょう。
多くの場合、早朝・夜間・日曜・祝日の工事は避ける、または制限されることがあります。必ず管理会社に確認してください。
上下左右の住戸や、共用廊下を利用する住戸には、事前に一言伝えておくと安心です。とくに小さなお子さま、高齢の方、在宅勤務の方がいるご家庭では、突然の作業音が負担になることがあります。
近隣あいさつ文は、次のような内容で十分です。
「〇月〇日〇時〜〇時頃、給湯器交換工事を予定しております。作業中は一時的に作業音や搬入作業が発生する場合がございます。ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。施工会社:〇〇 緊急連絡先:〇〇」
伝えるべき内容は、工事日、時間、作業内容、施工会社名、連絡先です。長い文章よりも、必要な情報がすぐ分かることを優先しましょう。
5.工事後の動作確認と書類保管をする
☞ 工事後は、施工業者と一緒に動作確認をしましょう。
確認したい項目は次の通りです。
• お湯が出るか
• 追いだきができるか
• リモコン表示に異常がないか
• 異音や異臭がないか
• 排気まわりに問題がないか
• 水漏れがないか
あわせて、保証書、取扱説明書、工事完了書、交換した機種の型番、施工業者の連絡先を保管します。次回の点検や交換、売却時の設備確認にも役立ちます。
給湯器は長く使う住宅設備です。経済産業省は、長期使用製品安全点検制度を、経年劣化による事故を防ぐための制度として説明しています。ただし、2021年8月の改正により、制度創設時の9品目のうち屋内式ガス瞬間湯沸器など7製品は特定保守製品から除外され、現在も指定が継続しているのは石油給湯機と石油ふろがまです。
⇒ 制度対象かどうかにかかわらず、使用年数が10年前後になった給湯器は、不具合の有無を確認し、気になる症状があればメーカーや専門業者に相談しましょう。
近隣トラブルを防ぐための注意点
☞ マンションの給湯器交換で起こりやすいトラブルは、作業音、搬入時の通行、共用部の汚れ、排気の向き、におい、蒸気などです。
☞ とくに排気の向きには注意が必要です。給湯器の排気が隣の窓、換気口、洗濯物、人が通る場所に向いていると、「においが気になる」「蒸気が当たる」「洗濯物への影響が心配」といった不満につながる場合があります。
必要に応じて排気カバーなどの部材を検討することもありますが、自己判断で取り付けるのは避けましょう。メーカー指定部材かどうか、設置基準に合っているか、管理規約で認められるかを専門業者に確認することが大切です。
また、共用廊下やエレベーターを使う場合は、養生の有無も確認しましょう。養生とは、壁や床を傷つけないように保護することです。小さな配慮ですが、マンション全体の印象や近隣関係に大きく関わります。
管理会社・施工業者に確認するチェックリスト
管理会社・管理組合に確認すること
• 申請が必要か
• 届出でよいか
• 必要書類は何か
• 工事可能時間
• 掲示・近隣告知の要否
• 共用部養生のルール
• 搬入経路
• 駐車場所
• PS扉や外壁加工の可否
• 排気カバー設置の可否
• 完了報告の要否
施工業者に確認すること
• マンション給湯器交換の実績
• 既存機種と交換機種の互換性
• サイズ・号数・排気方式
• PS設置への対応可否
• 管理組合提出書類の作成可否
• 共用部養生への対応
• 工事時間の目安
• 追加費用が発生する可能性
• 保証内容
• 工事後の相談先
この2つを事前に確認しておくと、工事当日の「聞いていなかった」「申請が必要だった」「部材が合わなかった」というトラブルを減らせます。
よくある質問
Q 同じ機種への交換でも管理組合に連絡したほうがよいですか?
A 連絡しておくことをおすすめします。同じ機種や同等機種への交換であっても、搬入、作業音、共用廊下の使用、工事時間などを管理組合が把握する必要がある場合があります。
Q 賃貸マンションの場合はどうすればよいですか?
A 賃貸の場合は、まず貸主または管理会社へ連絡しましょう。給湯器は貸主側の設備として扱われることが多く、入居者が自己判断で交換を進めるのは避けるべきです。
Q 給湯器が急に壊れた場合も申請が必要ですか?
A 緊急時でも、まず管理会社に連絡してください。お湯が使えない状況では早急な対応が必要ですが、PS扉や共用部に関わる場合は、事後報告や簡易手続きが求められることもあります。
Q PS扉に穴を開けてもよいですか?
A 自己判断で穴を開けるのは避けましょう。国土交通省の細則案では、ガス給湯器交換のためにPS扉に穴を開ける工事は、共用部分に影響を及ぼす工事として原則許可しない例に挙げられています。
まとめ 給湯器交換は「早めの確認」で安心につながる
☞ マンションの給湯器交換は、戸建てよりも確認事項が多くなりがちです。しかし、手順を整理すれば難しくありません。
大切なのは、管理規約を確認する、管理会社・管理組合に相談する、共用部分に影響しないか確認する、近隣へ配慮することです。
給湯器は、毎日の入浴、キッチン、洗面に関わる大切な住宅設備です。突然お湯が使えなくなる前に、使用年数や不調のサインを確認し、気になる症状があれば早めに相談しておくと安心です。
給湯器の交換や修理で迷ったときは、まず設置場所・型番・使用年数を確認し、管理会社への確認と専門業者への相談を進めましょう。PS扉、ベランダ、共用廊下、排気方向に不安がある場合は、自己判断で進めず、建物のルールと設置条件の両方を確認することが大切です。
⇒ 住まいの設備は、少しの不調を見逃さないことが安心につながります。手続きと近隣配慮を整えた給湯器交換が、家族の安心とマンションでの快適な暮らしを守る第一歩になります。
この記事は、ダスキン ハウスメンテナンス開発室のサービス方針および公的機関・メーカー等の公開情報をもとに、生活者目線で編集しています。
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監修者
ダスキン給湯器テクニカルアドバイザー 河津勇司
給湯器交換企業にてガス給湯器取り付け作業を担当
これまでに施工経験数3000以上を実施。個人事業を立ち上げ、給湯器取り付け経験を積む。
現在は株式会社ダスキンにて給湯器施工及び後輩育成に従事。





